第1回 研究発表会

日時=2002年11月22日(土)午後3時20分から
会場=神戸大学(発達科学部F棟5階F553教室)
研究発表
発表者=森純子
テーマ=日本の女性と椅子――1920年代および1930年代における3つのケース

キーワード
椅子、モダニズム、女性、日本

概要
1920年および30年代、日本は西洋の生活習慣を見習いながら、自身の近代化のアイデアを追求していた。1853年の鎖国の終焉により、日本は技術、情報の立ち後れに直面する。それに追いつくために、日本政府は、伝統的な日本の生活習慣を西洋のものへと転換させることが生活の合理化をもたらすと考えた。政府、知識階級はこの改革を奨励し、全国規模の展覧会などを支援した。特に、日本住宅に存在しなかった椅子はこの改革の鍵とみなされた。家庭での椅子の欠乏が、おそらく現代化への妨げとみていたのであろう、椅子は日本の生活習慣を現代化また再構成する上での象徴となっていく。

本研究は、1920年および30年代、日本の現代化を、日本女性がどのように椅子を扱い体験していたかを通して検証する。この時期、日本女性は、彼等の服装そしてライフスタイルを通して現代化を表現するようになった。彼女たちは、現代化の鍵となる椅子を様々な場で使い日本の生活様式の中での椅子の使用に貢献していった。彼女たちは、デパートのレストランといった公共の場で、椅子にどのように座るかなど学んでいく。彼等の椅子に関する知識は、私生活へと持ち込まれ、椅子を使っての現代住宅の形成、またその中での子供部屋を編成していく過程での彼等の影響は決して無意味なものではなかった。1930年代後半、軍部が勢力をふるうに従い、日本は自国の伝統に再び目を向け始める、これは、あたかも明るい日本のユートピア的なイメージを見ていた夢から目覚めるようなものであったのだろう。戦前の日本でのモダニズムは、実に短命で限られたものであったのだ。これと同じく日本女性の近代化の体験も限られたものであった。彼女たちのほとんどが、結婚を機に伝統的な日本の生活様式に戻っていき、それまで体験したであろう近代化の生活様式は、現実の生活には必要なく忘れ去るよりなかった。若い女性が日本の近代化を象徴する椅子を私生活で使うのは、未来の限られたユートピア的なイメージの中でしかなかったのだ。

共催=神戸大学表現文化研究会