『デザイン史学』第3号(2005年度)

journal03

目次

巻頭
デザイン史学研究会について
編集方針について
編集委員会と編集諮問委員会

論文
英国における日本美術コレクションの形成過程??山中商会の活動を中心に/門田園子
山本鼎の農民美術運動??ラスキン、モリス受容としての側面から/辻元由紀

特別寄稿
戦後復興期の日本デザインを語る/中山修一
回想のデザイン史研究/利光功
戦後のデザイン教育をめぐって/日野永一
デザイン振興行政に携わって/小関利紀也
GKインダストリアルデザイン研究所とともに/曽根靖史

書評
原研哉『デザインのデザイン』/評者 針貝綾
菊池裕子『日本の近代化と民藝理論??文化ナショナリズムとオリエンタル・オリエンタリズム』/評者 菅靖子

ノイズ
デザインジャーナリズムの10年/渡部千春

投稿要項

会則

執筆者について

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巻頭

デザイン史学研究会について
編集方針について
編集委員会と編集諮問委員会


論文1

英国における日本美術コレクションの形成過程——山中商会の活動を中心に

門田園子

キーワード
山中商会、日本美術工芸品、日本美術収集、コレクター、1915年英国赤十字展覧会、日本協会

概要
山中商会は1890年代から約半世紀にわたり、国内外で美術品の売買を行っていた日本人美術商である。商会は個人コレクターへの物品販売、公的機関への寄贈を含む美術品の取引及び買い戻し、カタログの出版、展覧会の開催、工芸品、家具の製造など、多岐にわたる活動を行っており、美術品の移動や紹介に貢献していたが、その全容はいまだ明らかにされていない。本論では、山中商会の英国での活動に焦点を絞り、英国における日本美術工芸品コレクションの形成過程を考察した。第3章ではこれまで見落とされてきた1915年に開催された日本美術工芸品の展観である英国赤十字社展覧会に注目したことで、商会を中心に繋がっていた20世紀初頭までの英国の日本美術コレクター及びコレクションの具体的内容を確認することができた。当時は日本美術の学術的研究が進められていたが、ロンドン支店にいた商会のスタッフは専門知識を生かし、英国の研究者に助言していた。日本協会を中心としたコレクターのコミュニティーから、美術館、博物館の日本美術コレクションの体系化が進められ、専門家が輩出されていったことが今回の研究から考察できるが、山中商会はコレクターの仲介者として英国に現在ある日本美術コレクションの性格を決め得る役割を果たしていたと考えられる。


論文2

山本鼎の農民美術運動——ラスキン、モリス受容としての側面から

辻元由紀

キーワード
民衆芸術、ラスキン、モリス、農民美術、山本鼎

概要
農民美術運動は、版画家山本鼎 (1882-1946) が大正9年に長野県でおこした美術運動である。創業後短期間で全国的な広がりをみせた農民美術運動であるが、その思想背景を明らかにした研究は少ない。そこで本論文では、農民美術運動の思想背景、同運動が大正、昭和という時代にどのように受け入れられ変化していったかを明らかにした。

思想背景として考えられるのが、それ以前に繰り広げられた民衆芸術論争である。民衆芸術論争には、本間久雄、加藤一夫等数多くの文化人が議論に参加しているが、それによってもたらされた民衆芸術への興味と理解の深化が、農民美術運動の発展と受容に寄与したとも言える。さらに、農民美術運動の根は、エレン・ケイ、ウィリアム・モリスから影響を受けた本間の教化的民衆芸術論にあるともいえるだろう。

農民美術運動の性格は、大正8年の建業から大正12年の関東大震災までの啓蒙的農民美術と、関東大震災以降の経済性重視の農民美術に分けられる。この農民美術変化の状況を、 当時の美術、工芸雑誌からの検証を通して明示した。本論文では、農民美術運動の背景にラスキン、モリスの思想があったことも示している。また、受容層にも同様の思想があったこと、田園と田園都市への嗜好が存在したことによって農民美術が受け入れられ普及したことも示した。


特別寄稿

戦後復興期の日本デザインを語る/中山修一
回想のデザイン史研究/利光功
戦後のデザイン教育をめぐって/日野永一
デザイン振興行政に携わって/小関利紀也
GKインダストリアルデザイン研究所とともに/曽根靖史


書評

原研哉『デザインのデザイン』/評者 針貝綾
菊池裕子『日本の近代化と民藝理論??文化ナショナリズムとオリエンタル・オリエンタリズム』/評者 菅靖子


ノイズ

デザインジャーナリズムの10年/渡部千春


投稿要項


会則


執筆者について